枕返し
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夜中に枕元にやってきて、枕をひっくり返す、もしくは、頭と足の向きを変えるという妖怪。
明確な外見は伝わっておらず、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、小さな仁王のような姿で描かれている。

「枕を返す」という行為の意味は、単なるいたずらとされることもあるが、人の命を奪う行為という逸話も存在。
そもそも古くから存在した日本の伝承として、「夜人間が夢を見ている間、肉体から魂が抜け出ている」というものがある。
夢から覚める際に魂は肉体へと戻るが、その目印となるのが「枕」。
したがって、枕の位置が変化することで、魂は肉体へ戻れなくなり、死んでしまう…という理屈。
また、夢の世界を「異界」ととらえる考え方もあり、この場合「枕」は異界と現世を行き来するための「扉」と捉えられる。
したがって、現世での枕の位置が変化することは、異界と現世との繋がりが変化した、または絶たれたことを示す。
もちろん、現世へ戻ってくることはできなくなってしまう。
「枕」に対してそこまで神秘的なイメージを持たない現代の感覚からすると「枕返し」は単なるいたずら小僧にしか見えないが、伝承によっては凶悪な妖怪ともとれるのだ。